空色


確かにそこ には 空色の少年が  在った。



空色の髪をして空色の眼をして空色の風と仲が良かった
いつも空色の風に空色の髪をなびかせて、
その空色の髪で顔を隠して 顔も空色になっていた。
いつも空色の風に空色の髪をなびかせて、
空色の眼を開けて空色の唄を 弱く唄っていた。
空色の服に また 空色が透けていた。
空色の風と一緒に何もかもを空色にして 空色の唄を 弱く 唄っていた。

現在 彼は 空色の風を探した。
いつも一緒だった空色の風は優しい嘘を残して消えた。
空色だけに見える 優しい笑顔を残して消えた。
「僕は成長していくから またもう少し旅に出るよ きっとそれだけだよ」
最後に またね って
空色の少年は 空色の風を探す 現在。
空色の少年は それが成長とは思えなかったから 空色の風を探す 現在。
だけど もう どこを探して走っても 空色の風は居なかった。そこには、無かった。

いつか 彼の空色の髪は空色じゃなくなった
現在 は またひとつ 空色を消した。
きれいだった 彼の空色の髪を消した。
彼の 空色の眼と 空色の風の優しい嘘を残して消えた。
そして もうひとつ
いつも一緒に唄った空色の弱い唄も もう聞こえない
それは当たり前で なんてったってさ もう 空色の風が居ないんだから
一緒に唄ってくれる 空色の風が居ないんだから
だけど空色の少年は 空色だったから 空色じゃない者より馬鹿じゃなかった。愚か じゃ なかった。
だからひたすら泣き叫ぶなんてことしなかったよ
だからひたすらその空色の眼で 空色の風を大声で呼んだよ 強く 弱く 呼んだよ
だけど空色の少年は その空色の眼を閉じてみて もう一度メロディーを思い出して唄ってみることに
気づけなかったよ
それも空色ゆえの 空色の少年ゆえの 空色の行動だよ
だから空色の少年は いつまでも空色のまま
髪が灰色に染まっても 空色の眼は空色のまま 少年のままで 空色のまま

現在 彼は 空色の風の嘘を信じた
空色の嘘を信じて 空色な風の笑顔を裏切った
空色の嘘を信じて 空色な風の笑顔を信じなかった
「すき」って呟く空色の少年は 確かに そこに在った。
その 白い腕を どうして振り解けるのだろう
その 白くて薄い彼を どうして裏切れるのだろう
かつて空色だった筈の私たちに
空色を裏切れるはずの無い私たちに
だけど その白くて薄い彼を どうして受けとめられるのだろう
もう その空色の眼には映らない私たちに


現在はまたひとつ 空色を消した。
きれいだった 空色の嘘と笑顔を残して消えた。
弱くて空色だった 大きな空色を消した。
僅かな空色の光と 弱くて大きかった空色の唄 しまい込んで消えた。
そして かつて空色だった私たちは
この手で この手できれいな空色を 空色を振りほどいた
どんなに後悔しても 涙でにじんで空色は消えた。
かつて空色だった私たちは この手で大きな空色を消した。
ただ 少しだけ残した
いつか唄えるはずの弱くて大きい空色の唄
いつか見えるはずの優しい空色の嘘
いつかできるはずの優しい空色の笑顔
これだけ空色は残した
かつて空色だった私たちはもう灰色になってこの手で空色を消した。





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