灰色の夢


毎日夢に見るの 見たことないくらい怖い夢なの
そこには人形になったあたしが居て あたしはその人形を見てるんだけど、
あたしはその人形があたしだってわからないの
その人形は灰色と黒のボロボロの鎧を着てるの
あたしはその人形を見て 嫌だとか思わないの なぜか羨ましいって思ってるの
羨ましいと思ってるあたしを見てるあたしがもうひとり居て、
どうしてそう思うの、あたしは何で人形のあたしを見て羨ましいなんて思うの、やめなさい
って大声で言うんだけど でも羨ましいと思うあたしはもうひとりのあたしに気づかないし、
もうひとりのあたしも声が上手く出ないの
そんな 夢を 毎日見る
毎日 ハッキリと見えるの

「…ねぇ、由貴にい起きて、 起きて」
隣で寝てる11歳年上の大きい肩を揺さぶる。
その小さくて白い手は、震えが止まらない。
「んぅ… …由里 どした」
薄く目を開ける。
「こわいゆめ、みたの どうしよう、こわい…の、こわ…」
「由里、だいじょぶ、こっちおいで」
寝た姿勢のまま細い腕を伸ばす。小さく震える、命の方に。
黙って伸ばされた腕の方に行くが、からだが上手く動かなくて涙ばかり流れる。
「…由里、だいじょうぶだから。 こっち来て、寝な。」
「…由貴にい ごめんね…。なんで、まいにちこわいゆめがみえるの…」

この兄妹は、両目が灰色をしている。
理由は、親が居ないから。
死んだとか捨てられたではなく、このふたりは親も居ないのに生まれてきてしまった子供だった。
有り得ないこの事実は、一般に、「地球に呆れた神が遊びで造った子供」だとか言われていた。
だから住むところも食べ物も何も無かった。
誰もが同じかたちのコンクリートの家に住んだ。家賃などないため、増えすぎた灰色の目を持つ子供達は
皆がここに住み、食べ物も分け合って生きていた。
由里には 周りの灰色の目をした子供が見えない何かが見えていた。
神が遊びで創ったこどもという事実が 由里にはハッキリと見えてしまっていたのだ。
それは あまりに哀しかった。
『灰色のコンクリートの建物ばかり残した大人達に 遂に神は呆れて神をやめた。』
『呆れた中の強すぎる生命力が何もしないことに飽きて 欲求不満から灰色の子供を作った。』
それは あまりに哀しすぎた。

「由里…だいじょうぶ。 ほら もっとこっち…おいで」
「うん…、あたし、由貴にいのちかくいると、こわくない、けど、」
「…うん」
「けど、由貴にいが寝れない」
「いいよ、別に…。 俺、寝なくても、へえきなの」
「あたしが、やだのっ」
「由里、じゃあ、手ぇ繋ごぉ。 …もちょっと、こっち、来て」
言われたとおりに手を出すと、骨ばった指が体温を伝えた。
「手ぇ繋いで寝ると、おんなじ夢見れんだって」
「じゃあ由貴にいも怖いゆめ見ちゃうよお」
「見ないよ。 …楽しい夢、見よう」
楽しい夢、見よう。
「うん。…由貴にい、ごめんね」
「だからなんで謝るの。 あったかいだろ」
「…ぅん。ありがとう」

灰色の建物と灰色の空の下で 高い雲の上を見上げても
灰色意外見えるわけない。
灰色の建物と灰色の空の下で 灰色の目を閉じて眠っても
目には灰色の光景しか映らない。
だから 繋いで
ひとりで 灰色のふたつの眼で灰色の空を眺めても灰色しか見えない
だけど灰色の眼がよっつ 真っ白の手をしっかり繋げば
別の色が見えるかもしれない
温かい温度を感じれば 温かい夢が見えるかもしれない
だから 繋いで
楽しい夢、見よう。





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