今お前が泣けないことに考えられる理由はふたつだとあなたは言った。

ひとつめはお前は今それほど悲しくないからだ
ふたつめは泣いて認めることが怖いからだ

視線はコンクリートに落ちたまま、あなたはそう呟いたんだ
夜だったから、あなたの眼が虚ろだったかどうかは判らない。

この自分の存在理由を教えてくれ
とあなたに頼んだ。
そう頼んで返ってきたことがこの言葉だ

あなたは問題提起がとても上手だったことを思い出したけど
今の自分にその問題はあまりに小さいことの様に思えて
コンクリートから目をそらすことなく耳の中に小さく響く波紋を聴き続けた。


どうやらあなたの存在価値はとてつもなく大きいようだ。


なのに隣のあなたは体温を分けてくれない。

手袋をしていない手をコンクリートの上に這わせて何粒か砂利を掴んだ。

掴んだ砂利はまたてのひらの中でもてあそばれる。

まるで眼に何もうつらない。
動きつづける瞳は何か探しているようだ。

その動きに ついていきたいのに

コンクリートに視線を落としたまま
何度か瞬きを した。



その度に、世界が1度終って世界がもう1度始まる。



あなたがコンクリートから視線をそらした。
そして何度か瞬きをしたようだ。
そのまま砂利をもてあそんでいたこのてのひらを見つめてくる。

その眼は透き通っていて、見えるままの景色を映していて、
今にもこぼれおちそうで つい つられた。
視界が 鈍く 歪む。


分けられた体温は何よりの証しになっていつも世界を歪ませるんだ


さっきとは違う声だ
夜のコンクリートさえも振動させる、世界全てを映すその声だ

だいじょうぶだ …なにも 言えない けど


世界 全てを移すその声だ。
夜さえも振動させる、その声だ。


全てが証しになるんだ


敵わないよ

なんでそんなにも

ああ
 

世界が映った


なんでそんなにも

ほしいものを

いつも


いつも



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