Fate Episode1 Beginning between the past and the future


神様が最初に創った人間は、アダムとイブといわれています。
アダムとイブが感情を持つようになったのはなぜなのでしょうか。
実はアダムとイブが生まれる前、人間が感情をもつきかけになったこんな物語があったのです。

舞台は地球。時は地球ができる前、つまり今の地球ができる前のもうひとつの地球。
その頃の「地球」は暑くも寒くも無く、過ごしやすい気候が常に保たれていた。
川も池も湖も海もたくさんあった。とても綺麗な水だった。
動物も本当にたくさんいた。今と変わらない野生の動物達が、たくさん、いた。
だが、食べ物は何も無かった。
そこに住む人々は、完全な自給自足で暮らさなければならなかったのだが、
野菜も米も育たない土だったので、狩をして動物を食べるしかなかった。
けれどその人間は今考えられる古い人間とは違い、
よく動き活動的なのは変わらなかったが食欲は旺盛だった。
1番初めに神が創った1代目の人間は生きる気力を持たなかった為、できて1時間後に滅びた。
そして、神は2代目の人間を何人か創ったのだった。感情を喜怒哀楽のうちほんの少しだけ持たせて。
誰かを敬う気持ちはかろうじてもっていたが、
それでも人間たちは知性が極端に少なかったため、性別も年齢も恋も友情も血の繋がりだとかも知らなかった。
そんな「地球」の2代目のある人間3人が海の近くの小さな山の洞穴に暮らしていた。
その洞穴や小さな山や海は、「レサマ」という小さな町に収まっていたが
町自体が国だから、小さな国に収まっていたともいえる。
レサマは小さく汚かったが、よく小さなお祭りなどをして楽しい町だった。
性別なんて知らない人間たちは、「皆同じ」と根拠なく思っていた。
誰かを敬う気持ちはかろうじて持っていたが、他には殆ど細かい感情がなかった。
それはこの「地球」の神は、人間に知性を与えることをよく思っていなかったからなのだった。
知性など与えず、少しも考えず、本能の赴くままに生きることが一番正しい生き方なのだと、この代の神は思っていたのだ。
この3人の人間たちも、神の願いどおり本能の赴くまま、他の動物たちと同じように生きていた。男も、女も。

ガガガガガガガガガガガガガガガガ…と大きな音がしている。
音の出し主は性別を知らない人間の、「女」だった。「ナナ」という名前を持っていた。
茶色く汚れた太い金髪の長い髪が、その振動で激しく揺れている。
この人間の女「ナナ」は、土で汚れた大きい機械で地面に穴をあけているのだった。
理由は硬い硬い土の奥ふかくに住んでいるホネウサギを捕る為だった。
ホネウサギは食用の動物ではないのだが、その歯ごたえは例えると軟骨のようで、ナナのお気に入りだった。
「アッ」とナナが声をあげ、眼は輝いた。ホネウサギの通路を見つけたようだ。
ホネウサギも人間の気配に気付き、通路をサッと逃げていく。
ナナは逃げた位置を予測して、別のポイントに機械を押し込み、コードを強く引いてボタンを押し、また
機械を激しく動かし地面に空洞を作っていった。
だいぶ深くまで掘り進んだ時、ゴリッと音がして、ホネウサギはドリルの先に潰された。
ナナはその耳をグイッと土の中から無理やり引き抜き、こう言った。
「ガキウサギだァー!つまんねぇーーーっ」
そして耳を片方歯でひきちぎり、良い音をさせながら骨を噛み砕く。この人間の歯はいろんな物を食べるせいで鍛えられていた。
ホネウサギの耳を噛みながら、ほかの2人のところへナナは走っていった。
「ナオォーー!トモォーー!ホネウサギ、子供だったよおぉー」
「あははー!ナナのばーかっ!まーたポイントはずしたぁー」
にかっと得意げに笑ったのはナオだ。
いろんなことを子供のように行動するが、これでも19歳の男だ。
この人間たち以外、つまり未来に新しく生まれる今の人間達が見たなら、きっと変に思っただろう。
…今の件りの通り、この人間たちも滅びる運命にあるのだ。
我々人間たちは神が3回目に創りだした、いわば人類3代目なのである。
「うるさいよナオ!あたしはガキでもすきだからいーの!」
「強がりぃー!ナナの強がりーーっ」
「うるせぇってんだろ!」ナナはナオのわき腹に回し蹴りを一発くらわした。本気でだ。
「ってぇーっ!んのやろォッ」
「ストップ。ナオ止まって。」トモがナオの拳を自分の大きい手で止めた。
いつもこんな風にナナとナオが喧嘩をする。それを止めるのが、トモというわけ。
ナナは165センチくらいの身長だが、ナオは150センチほど。トモは185センチの長身だ。
長身の分手ももちろん大きかった。
「ナオの方が力が強いんだから…。またナナが大怪我しちゃうよ?」
「……っちくしょぉー!コイツなんか痛い目見ればいいんだよ!」
「けど、ラトロを使えるのはナナだけなんだから。ホネウサギ、食べられなくなってもナオはいいの?」
ラトロというのはホネウサギを捕まえる為に地面に穴をあけた、あの機械のこと。
「…………ううん。ホネウサギ、ウマイから嫌だ!」
「なら、しょうがないよね。ナナとはおあいこ。」
「トモありがとーーん!こんなナオとは大違いだよ!トモはやるねぇー」
と言って、背の高いトモを大きい目で見上げ、ウインクした。
「ナナが怪我したらホネウサギが食べられなくなっちゃうからね」
そう言ってトモはいつものように微笑んだ。ナナも笑った。
眉をしかめ、目を細くしてナナを睨み、キツイ顔をしているナオ。
感情というものが極端にしか現れない2代目の人間にはこの本気の怒りの表情も当たり前のことだ。
そしてまた少し後か次の日には子供の喧嘩のあとのように3人で笑いあうようになるのだ。
「ハイッ、トモ、ホネウサギ!あっちょっと待ってっ」
一度渡しかけたホネウサギの耳の端を強く噛み、根元から引きちぎった。
そして耳の無いホネウサギを全部トモに渡した。
さっきちぎった耳の片方を、ナオに投げた。
「ナオにもやるよーっ!」
素直な2代目人類。それは素直に「ありがと!」と言って笑った。
それを聞いてすぐにナナは走り出し、風を切って走るいわば空のバイクに飛び乗った。
夜ご飯の獲物を探して捕らえに行くのだ。
汚れてくすんだ金髪が、強風にあおられて旗のようにゆれた。



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