そこに入って その事実を知って あなたにどんな気持ちが生まれるか
それは人それぞれ違うこと
そこに入った その事実を知った ほら あなたはまた―
新しい気持ちが 写ったよ





「記憶保存の象徴」





日本列島の西の果てに 世界一小さい島 沙流奴島という島があるそうだ
人口は教師4人生徒7人他21人のわずか32人、民家と店が5件ずつ 小さい学校が1棟と大きな石油工場が1つ あるそうだ
どうやらその学校に こんな噂が聞こえたそうだ



「ねえ 人間ポラロイドって 知ってる?」


少ない人数でめぐりめぐる噂 だが尾ひれがつくことも無く
東京から島の子供へ 噂は伝わった

―知らないよ、何、人間ポラロイドって

―まだ知らない奴ってあんたのことだったんだ、いいよ教えてあげる。
 これ渋谷の学校の友達からきいたんだけど、本当の話らしいよ。
 正式名称は人間ポラロイドカメラっていうらしいんだけど、
 どんなものかっていうと、人間が生きてきたこと全部の出来事や景色、他に気持ちまでも、
 ポラロイド写真みたいに形にしてぜーんぶ収めることができる、
 特別な遺伝子でできた、すっごい小さいミクロのポラロイドカメラのことなんだって。

それが、人間ポラロイド。

―…いくら渋谷発っていってもさぁ、そんなの嘘くさいよ。
 日本中の人間の人生がポラロイドカメラで撮ったみたく全部記録に残ってるっていうの?
 そんな大量の写真なんかあるわけないじゃん

―ううんそんでね、まだ実験中らしくて、日本人全員の分は無いらしいんだ。
 そりゃそう思ったよ、あるわけないって。あたしだってね。でもまだ続きがあって、
 もう東京とかトカイでは全部調べがついて可能だってことは分ってるんだって。
 なんかの拍子で隠してた実験内容とかの情報が漏れちゃってこっちまで伝わったらしいんだけど。
 でもそれは絶対にバラしちゃいけないことだったから、東京とかじゃこんな話しちゃいけないんだって。
 ホラこっちは田舎だしね。情報の伝わりだって断然遅いわけだし

―調べって、どういうこと

―つまりその人間ポラロイド保管庫っていうのは、

四次元だから、可能なんだって。

―…、う そだぁ…。、だってそんなん、四次元なんてドラえもんの世界じゃんあるわけないよ

―あるんだって。緯度経度、ピッタリ合った1ヶ所だと。

―……どこそれ…

―日本列島の西の果て、

沙流奴島。

―ほんとなの…

―ほぉんとだよぉ、…信じらんないけど。で、1番怪しいのってさ、

―あの石油工場しかないじゃん…

―そう。行って見ない?人間ポラロイド保管庫なんてさ、気になんじゃん。最近行っちゃいけませんって言われんの
 やたら厳しくなったのはそういう理由だったんだよ。
 なんてったって極秘中の極秘だもんねぇ

―そ りゃ…、気に はなる けど…

―じゃあ行こうよ。東京みたいに厳しくなる前にさ。
 やっぱ夜中とかがいいよね。今日の、3時。3時なら良いよ。決まり、抜け出してきなよ。



日本最大の、極秘中の極秘情報、人間ポラロイド保管庫本部が沙流奴島に存在する
それが沙流奴島に伝わったことに対する対応が、日本政府は遅れた。
そして沙流奴島女学生2人が、人間ポラロイド保管庫秘密大暴露探検と銘打って、
4月の28日午前3時、沙流奴島石油工場侵入を決行したのである。

たかだか15歳の女学生2人。
そんな半人前の彼女等には、「他人の記憶」と「自分の記憶」の違いに、
どんな大きな危険があるかなど解らなかった。
そして、沙流奴島の人間全員が特別な遺伝子でできた人間ポラロイドカメラを埋めこまれ
モニター実験をされていることなども、
もちろん 知る由も無かったのだ。

「う…わ…、凄いよ、鍵…これ赤外線とかないかなぁ」
「だあいじょぶだって こんな辺鄙なとこで赤外線ガードなんかあるわけないじゃん」
「いやけどさ、やっぱヤバくない?…あたしやな予感すんだけど…」
「いっつもそうゆってはずれんじゃんかよ!結局心配性なだけだよ、ほら、早く」
「だだだってこんな門とか乗り越えちゃったりして警備の人とか見つかったら」
「いねえよこんな夜中に!しかもいくら人間カメラ保管庫っつってもこの島なんだから。
別にイケブクロとかギンザとかじゃないんだからさ、それにあたしスタンガン持ってるし」
「嘘…闇通販…?」
「うるさいな!早くしなよ!なんでスカートなんかはいてくんのよ…」
「ホラドアにも鍵かかってんじゃん!うわ暗…」
「だいじょぶガラスだよ、割れるよ。つか明るかったらヤバイし」
「…なんか…変じゃない?」
「………っ、変、…って、何よ!」
「わかんないよ!…なんか、変…。普通じゃ、ないよ…」
「…………大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないよぉ!変だって、思ってるんでしょ!帰ろうよ!オカシイよここ!早く帰ろう!」
「…あ、待ってホラ!!ここだよ、“人間ポラロイドカメラ保管庫本部”…」
「…っほんとに…。」
「…鍵、開いてる…」
「嘘誰かいんの?」
「居ない…入るよ…」

2人が目にしたのは実験室と書斎が混じったような青い部屋だった。
本棚の中には大量の洋書や古い書物、そして32冊の分厚く、真っ白なアルバムとノート。
黒いテーブルの上には大きな顕微鏡とわからない機械、実験道具やガスバーナーなどが殺伐と置かれていた。
一見何も意味を成さない置かれ方の様で、誰にも逆らえない、そこにあるべき姿で置かれているようなその光景。
それを無意識に感じた女学生2人は心臓の動きがある規則性を持ってはやくなるのに気付いた。
誰かによってはかられた変化したメトロノームのような表現しようのないリズム
時計の1秒ごとの様に違和感なく向える一瞬一瞬の流れ
超越された全てが2人の血の流れに現されていると。
それは起こるべくして起こったような不気味な恐怖に似ていた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・
「自分の記憶と他人の記憶との違い」――
「他人の記憶」というものは割と取り込みやすいものだ。
当人からの思い出話や一部の写真などで「出来事」を「想像」することができる。
それは脳の機能と融合し「自分の記憶」の一片となるがもとは自分の記憶ではないものだから
脳の外側に張りつくだけでいくら印象に残っても剥がれ易いつまり「忘れる」ことが簡単だと言える。
だが「自分の記憶」はそうはいかないのだ。
自分の脳に残っている記憶は何か嬉しかったり悲しかったり特別印象に残っているものがほとんどで
今まで生きてきた一瞬一瞬の色や匂いや気持ちなどを鮮明に思い出すことは不可能だ。
それは「自分の体験してきたこと」が完全に自分のものではあるが、
「自分の体験してきたこと」が「その時の場所や時間」つまり「その時の時空」に帰るからである。
すなわちそれは自分の記憶でありながら世界の記憶と融合する一種の時空と成り得るということなのだ。
恐ろしいのはこのことが起こす時空の歪みだ。
普段覚えていない「自分の記憶でありながら世界の記憶でもある一種の時空」が何かの拍子に自分に帰ってくる。
その膨大な質量に人間の身体というものは絶えられることがないのだ。
だが人間ポラロイドは自分の記憶でありながら世界の記憶でもある一種の時空という膨大な量を保存することが出来る上に
それを自分自身に返すきっかけまでも作り得てしまう。
人間ポラロイド作成の、本当の利点や目的までははっきりしないが、
日本政府は明らかに、殺人をおかせる兵器を造ったといえる。
そしてその犠牲者が 人間ポラロイドのモデルの女学生2人となる。

「このアルバム…」
「人間ポラロイドの記録がこのアルバムにあるんじゃないの…」
「…あっ…、そうみたい…。だってほらうちらの名前のアルバムがある…」
「…ほんとだ…、じゃ、まだ実験中って、うちらで実験中、って こと…。」
「そっか!うわ…こん中にうちらの今までの記録があるんだ…!」
「凄いじゃん!…凄い嬉しかったけど良く思い出せないタッキーと握手したこととかまたちゃんと思い出せるってこと!」
「しかもこっからはがしちゃえば生徒手帳入れて持ち歩けんじゃん!凄い嬉しいんだけど…!」
「見よ見よ!絶対得だってうちら!」
「んじゃ折角だし3210で一緒に開けようよ! いい、いくよ、3210でね、せーの、」
「3、」
「2、」
「1、」
「「0!!」」

人間ポラロイドカメラはカメラという名前でも記録が写真として残るわけではない。
先のとおり それは膨大な量の、一種の時空であり、見た目は様々な色で濁った球体なのだ。
そしてそれは ―ある意味―人間のコピー に 等しい。



4月28日 午前3時11分 沙流奴島人間ポラロイドカメラ保管庫本部では鈍い閃光と爆発音が響いた。


その翌朝、2人の女学生の無残な姿は人間ポラロイドカメラ保管庫本部の人間によって事故として片付けられ
沙流奴島でも人間ポラロイドの全ての話題を口にすることを禁ずる令が国により布かれた。

人間ポラロイドカメラによって造られた自分自身の記憶という名の膨大な時空の歪み。
これの一瞬の間の逆流。
「記憶の保存」はこれ以上進化してはいけないのだ。




一般的に思われてなどいないが
ポラロイドカメラというものは ある意味恐ろしい物である。
手軽にその一瞬の記憶を 一瞬で、しかもボタンひとつで「形」に表すことができてしまう。
そしてそれを時が経ってからまた目にすることによって
例え封じこめていた記憶を鮮明に造り出せてしまうのだから。

今はまだ、一瞬の記憶の保存しかできない。
それによって起こる時空の逆流というものは、嬉しかったことや悲しかったこと一片を思い出すにしかすぎない。
だがその記憶の保存が一瞬やビデオのような何分何時間ではなくなった場合
自分が生きてきた時間と全く同じ「一生」までが可能になったとしたら――。
それは決して一概に良いことといえないだろう。
そしてそれが可能に成る時は
遠くはないかもしれない。







→after word...
長いヨ!!こんな長くするつもりじゃなかったんだけどな…
あのこれはテーマがテーマだけに難しい言葉とかいれないと表現できなかったりして
まあ難しかったんですけど(…)でもこれ自体は実際に思ってて文章にしたいなあと
思ってたことだったのでできてよかったです
でもまだまだ至らないなあと。。(ウン!)
まあ至らないどころじゃないなあと。
わかったかな 内容…(終ってる)殺伐と置かれていたとかいうかな(…)
「殺伐」とはどういう意味かとか説明できないんで自身ないとこも多々(…)ありますけど
でも失敗作とするにはあまりに勿体無い上に嬉しいし気に入ってるしなのでのせましたよ!良かった!
まぁもうひとつ最大級に至らないのはテーマに沿っているかということで。。(グサリ)
無理やりポラロイドカメラに合わせた感がしなくもない…ような…(します
こんな至らないずくしの奴の文章ですが結局どうでしたか。(…)
読んでくれてどうもありがとうございましたです。。ベコリ

ちなみにどうでもいいですが、沙流奴島→さるどとう。さるどじま。別に意味ナーシ(ほんとにどーでもいー!)


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