きみのうた



うたってくれ、ただ、きみだけは
ずっとずっと、躯が朽ちても、ぜんぶがきえても、
だれも、きみの声に応えなくても、ずっとうたっててほしいんだよ
きみの声を忘れないように、なくさないように、そのために
うたってくれ ただ、きみだけは。

いつまでもきみはきみ自身のことをおもい続ける。
いつもニルヴァーナかセックスピストルズかシロップ16グラムを聴いて、
リアリティのない現実に向けて覚醒する。
それはまるでヘロインのかわりだときみは言う。
Why Sid diedとかかれたポストカードと後ろ姿を見つけるたびにきみはめをふせ、
そのあと必ずきみは世界のどこであろうとヘドを吐く。

きみは死にたいと言ったら死んでみればと言った。
眼は空虚を見つめて指先は砂を弄びながら。
そのときはじめて、きみには勝てないとおもったんだ。そして、
それから、勝ち負けは捨てた。

きみはこれ以上きれいな色はないと思えるようなオレンジ色の中で、
いつも決まって壁にもたれて眼を閉じ、呪いをはじめる。
ときどき、伏目がちだったり、少しだけ苦しそうだったりするけど、なみだを見たことはない。
あくまで同じフィルターのかかった中での微笑みなら、何度か見かけたことはあるけど。
きみが呪いだよと言ったから、誰にでもきみは呪っていると言っている。
もちろん、話す相手なんかいない。
だけどほんとうは、きみの呪いは、
いつも疲れて、いつもくたびれて、いつもすべてに慣れて、いつも、やっぱり、疲れて、
それでも、総てを受け入れたのちにある、祈りであると、思っている。
だってきみは世界を呪っているくせに、自分のフィールドに、入れることを拒むくせに、
きみの部屋には入っていけるから。
いつか、きみをころしたいとさえおもう。放してあげられるなら。
世界を呪うきみに、こんなことがおもえるわけがないことも知りながら、だ。
だけどそれよりも、きみの呪いの相手に、だれよりなによりふさわしいと思ってるんだよ。
何より救いようがない。あたりまえだね。
だってきみが、世界だと、おもうこともあるからだ。

きみに会うまで音楽はなにもあたえないとおもっていた。
所詮楽器を手で鳴らすだけのこと 所詮のどから声を出すだけのこと
それがかさなっただけで何も与えないと おもっていたよ。
こんな痛さや優しさが きみの声からひろがって 深く病魔を住ませることになるまでは。

「あなたになら、きっとこの音は届くよ。」
どれだけ、うれしかったのか、知ってるのか。
必死で、紡ぎなおしてくるのにも疲れて、なみだも、あぁ、きっと、枯れたな、ってぼんやりして、
すこしわらってみたりして、なにも、もってないなあって何度もおもって、それでも、
きみのことを助けたいと、
きみのことを守りたいと、
きみのことをだれよりあいしたいと、
きみを、だれよりあいされたいと、
おもってばかりで、溢れてとまらなくて、もう出過ぎて、内臓もでて、まっくろになっても止まらなくて、
どうしようもなくて、なのに、
これだ。
まだあったなあ、と思わせるんだ。
それはすべてにむけてうたわれた音なのに、すべてにむけてうたわれるべき音なのに、
こんなにも小さい音なのに、こんなに大きな涙と、月のかけらと、汚れた手のひらと、大粒の涙を、
ぜんぶいっしょにさらけだすから、こんなにも大きな腕に、包み込まれてしまうのだ。
ただその手を、ただその手をとっていたくなる。もっとさがして、見つけてほしくなる。
だってそうそれは、すべてにむけてうたわれた音なのに、大きなすべてにむけられているのに、
確実にとなりにいてくれて、確実にこっちをむいて、みつめて、手を強く握っていてくれる。
望むなら、いつまででも、大丈夫だと唄い続けて、手を握り続けていてくれる。
またどうしようもなくなる。もう、だめだ、って、わかってるんだ。それでも、
それでも、しかたないんだ。
だいすきだ、だいすきだ、だいすきだよ。
こんなに溢れてとまらないんだ、ずっとずっと。
きみのうたが、とまらないように、流れて、吹き続けるのと、おなじように、とまらないんだ
だいすきだよ。ずっとずっと だいすきだ。








アフターワード―――――――― 「唯一」の片割れです。主人公は女の子のうたに導かれたっていう設定にしようかと思ってたときに冒頭の部分をかきました。
でもそれってベタだし(?)全然うまくいかなかったので一回削除したんですがこうして復活になりました。
これは全部あたしがかいた文ですが(当たり前)いろんな人のワンシーンがどんどんフィルムみたく想像できたので、
それを見ながら文を添えていったという感じです。
これも一人称は固定していません。主人公が違うなら、いっこの段落ずつ一人称つけたっていいじゃんっていう話なんですが、
主人公が違うからこそちょっと身近に感じてほしかったっていうか
何求めちゃってんだって感じですけど
だれでも ありえるんじゃないですかねえこういう本能と情と止まらなさの切なさっていうか 自分でもなにいってんのかわけわかんなくなっちゃったのでもうやめます。
まあいくらいろいろいったって結局はあたしの気持ちというところにかわりないというところが痛いですけれども。いろんな意味で。この、恋心。(あ―あ)
とりあえずこれ、結構好きです。100の最後のテーマ「貴方というひと」なんていうからにはあたしのほんとにお気に入りで厳選したものをおきたかったのでポンッとこれができてよかったです。…はい。
まあいいやいつものとおりわけわかんないかもしれないですけど得るものもなにもなかったかもしれないですけどあたしは好きです。そして読んでくれて、本当にありがとうございました。



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